誉の日記的物語

日記がてら書きたい事を好き勝手に書いています。 小説を書いており面白い小説がかけるようになりたいと、構成などはちゃめちゃですが書いてます。 読んで頂けると嬉しいです。どんな事でも意見貰えると助かります。

籠り物語

テスト最終日の夜行バスで再び白馬へと戻る予定なのだが、今回の大阪での最大のミッションが今日残されていた。

 

テストを終え家へと帰った卓はひとまずゆっくりする事にした。


夕方頃から彼女と逢う約束をしていた卓は、先に白馬へと戻る準備を終わらせてその時を待った。

 

彼女からメールが来た。
卓は原付で彼女の家へと向かう。
慣れた裏道を通れば信号に一つもかかる事なく10分程で辿り着いた。

 

家の下で彼女のミホは待っていた。
その雰囲気からどんな話になるのか既に悟っているようだった。

「おつかれさん、お待たせ」
「おつかれさま」
どことなくぎこちない雰囲気が漂う。

卓にとってもミホにとっても話す事は山程ネタとしてあるはずなのだが、久しぶりに逢ったカップルとは思えない。

 

卓は重苦しい空気に耐えかねて切り出した。
「話ずらい事話しに来たのはその感じやともうわかってるんやんな?」
「うん、なんとなくはね」
ミホは静かに頷きながら小さい声で答えた。
「話しせずに終われるならどれ程楽かって正直思ってしまってた。それはごめんな」


自分の思っているだけの事をわざわざ伝える必要など無いのだが、卓はミホに対して正直に居たい、そして、例え一瞬でもミホに対して失礼な事を考えてしまった自分への戒めでもあった。

 

「卓らしいな、そんな事言わんかったらわからんのに」
ミホは少し微笑しながら言った。

籠り物語

大阪での学校生活へと戻った卓は日々退屈な学生生活を送っていた。


卓は中学の頃から学校が好きでは無かった。
友達とも普通に遊ぶし部活もする、しかし、家で一人ゲームをしている時間が一番幸せな時間だった。

 

何の刺激もない学校生活を淡々とこなし、3年生最後の学年末テストが始まる。


日々の授業をこなすだけで卓にとってテスト勉強等は不要だった。

卓の成績は学年2位だが、クラスでは常にトップだった。


そんな卓はカンニングという行為など全く興味が無いものだったが、仲の良い隣の席の本田をいつも助けていた。

卓のカンニングの手助けはこの上なく大胆なやり方だった。


コソコソと答案を見せるやり方がただ面倒だったのだろう。
自分が問題を解き終わると、答案用紙ごと本田に渡すのだ。
そうして自分は問題用紙だけを机に起き、机に突っ伏して寝るのだった。

これ程までに豪快なカンニングの手助けは本田の補習を見事に助けた。


卓の面倒くさがりもここまで来れば天晴れである。

 

そうしてテストも最終日となり、卓と本田は難なくテストをクリアした。

籠り物語

フロントのチカさんを呼びに行き皆で夕食を食べた。


卓はそれほどゆっくりしている時間が無かった。

神戸屋はこれから宿泊客の夕食が始まる。
卓はオーナーに夜行バスの乗り場まで送ってもらう事になっていた。

 

車で送ってもらう道中
「学校頑張っておいでや、また戻ってくるの楽しみにしてるからな」
そう優しい言葉をオーナーは卓へとかけてくれた。

 

今晩はまた雪が大量に降り注いでいる。
車の窓からそれを焼き付けるように外を眺める。

 

大阪へ戻ってからの事は後回しにしよう、今はこの景色とこの時間を最後の最後まで噛み締めよう。

 

また戻ってくるのだからここまで神妙になる事はないのだけれど、卓にとっては今回大阪へ戻るにあたって、学校以上に重要だと思っている事に決着をつける必要があったのだ。

 

長いようで短かかった冬休みの雪国での生活、しかし、卓の気持ちに答えを出させるには充分過ぎる期間となった。

籠り物語

帰り支度を済ませ荷物を持って下へと降りた。

自分のために夕食の準備をしてくれている厨房へと行き、いつも通り準備を手伝った。

 

「そういえばタカシも学校ちゃうの?」
「俺は明日帰るよ」
「そうか、また来るんやろ?」
「そのつもりやで」
タカシも同様に卒業の年のため一度名古屋へと帰るのだった。

 

そんな二人の会話を聞いて康之さんは
「しっかりテストクリアして来いよ、補習とかなったらめんどくさいからな」
しかし、卓はそんな事全く気にしていなかった。
「それは全然大丈夫です、こう見えて優秀なので」
卓は自信満々に答えた。


それを聞いたタカシは
「僕はなんとか頑張ってきます」
そう答えた。
「しっかり頼むで。卓えらい余裕やけどお前そない成績えぇんか?」
聞かれたら答えるしか無いと
「一応学年2位です、5段階評価で平均評定4.8です」
少し照れるように答えた。

 

すると、康之さんよりも先に
「うそやん!凄すぎ!」
タカシが大声で驚いた。
「人は見かけによらんでな、また2位な辺りがみそやな」
微笑みながら康之が言った。

「どうしても1位に勝てなくて」
そんな会話をしている内に夕食の準備がてきた。

籠り物語

新年からいつもと何ら変わりのない籠りの生活を日々過ごす。
しかし、卓は三学期がまだ残っているので、一旦大阪へ帰らなければならない。
その日が着々と近づいてくる、帰りたくないのだが仕方ない。

 

残りの日を無駄にしないよう日々の仕事を一生懸命こなし、毎日全力でスノーボードに明け暮れた。

この時卓は、ただ帰りたくないだけではなく、彼女の事を片付けなければならない、そんな重い悩みも抱えていたのだ。

 

そんな卓の気持ちとは関係無くその日は訪れる。

朝の仕事を終え、いつも通りスノーボードを終え神戸屋へと帰る。

 

大阪へ帰る準備をして、一度オーナーの部屋へと挨拶に行き、今日で一度帰りまた来る事を伝え厨房へ向かった。
そこで康之さんにも同じ事を伝えた。
最後にフロントに居たチカさんへ挨拶へ行った。

 

一通り挨拶を終え部屋に戻ろうとした卓をチカさんが呼び止めた。
「今日はもう夜は休みでいいからゆっくりしとき、晩御飯早めに準備するから食べていきよし」
「いいんですか?」
「何言うてんの、当たり前やんか」


卓は改めて神戸屋の人の暖かさを感じ、帰るのが余計に寂しくなった。
「ありがとうございます」

そうお礼をして部屋へとまた戻った。

籠り物語

盛大な宴の後の朝、卓は意外にもスッキリと目覚めた事に驚いた。
それもアラームがなるよりも早く目が覚めたのだ。
身体は重たいが頭はスッキリとしていた。

 

ひとまず煙草に火をつける。
昨日の彼女からのメールを思い出し開いた。

メールには卓を祝う言葉と、仕事や身体を気遣う内容が記されていた。
卓はさすがに返してあげないと失礼でもあり、かわいそうだと思い、冒頭に謝りの言葉を添えて珍しく丁寧にメールを返信した。

 

彼女にとっても卓の誕生日は特別な日のはずだった。
それなのに当日のうちに直ぐに返信しなかった事を卓は後悔した。
新年早々自分を責める事になった、そんな年明けだった。

 

卓は少し早く下へと降りた。
すれ違う宿泊客と新年の挨拶を交わす。

厨房へと向かい煙草でも吸おうと向かうと、既に康之さんが朝食の準備を始めていた。
「おはようございます、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。昨日はありがとうございました。」
挨拶とお礼を盛り込んだ少し長めの挨拶をした。


「明けましておめでとう、よろしくな。あんだけ飲まされてしんどないんか?」
「それが不思議と頭スッキリしてるんですよね。身体はさすがにちょっとだるいですけど」
「そうか、まぁそれなら良かったやん」

 

そんな会話を交わしながら二人は並んで煙草を吸った。

籠り物語

オーナーが持ってきたワイン確かに美味しかった。


意外と楽にグラスのワインを飲み干した時、卓に異変が起きた。

卓のすぐ側でゆうきが遊んでいたのたが、ふとゆうきの方を見ると、ゆうきがぐるぐると回って見えたのだ。
「やば、何これ」

それから辺りを見てみると全てがぐるぐると廻っている、遊園地のコーヒーカップなど比になら無い程に廻っている。


いよいよまずいと感じた卓は
「明日の仕事に影響するので先に寝させてもらいます」
すると康之さんが
「そば食べんでえぇんか?」
すっかり忘れていたのだが、それどころではない卓は
「ちょっと酔いが廻って食べれそうにないので」
そう断りを入れ
「お祝いありがとうございました、お先におやすみなさい」
なんとかそれだけを告げ、二階へと上がった。

 

屋根裏へのはしごを昇れるのだろうか、そんな事を考えた記憶はあるのだが、そこからは覚えていなかった。

 

大量にビールを飲んだため、普段は絶対に行かないのだが夜中にトイレが我慢できなくなり目が覚めた。
トイレから戻った卓は、まだふわふわと浮いたような感覚のまま再び溶けるように眠りへと落ちた。

籠り物語

かといってオーナー一人だけでも充分過ぎる強敵だった。

テーブルのピッチャー二つは瞬く間に空になる。
オーナーは水を飲むよりも早いペースでビールを流し込む。


オーナーがグラスにビールを注ぐペースで卓のグラスも満たされる、卓はあっという間に酔いが廻っていた。

 

空になったピッチャーは新たに満タンになって帰ってくる。
卓は地獄を見ている気分だった。

このままではおかしくなってしまう、そう思った卓は一言オーナーへ断りを入れペースダウンする事にした。

 

その間にもピッチャーはみるみる内に空になった。

この人の肝臓と胃袋はいったいどうなっているんだろう。
そんな事を考えながら酔いでふわふわとしていた。

 

ふとオーナーが席を外した。
しばらくすると、またワインボトルを持って帰ってきた。

「うそやろ」
卓は思わず声に出した。

「これうまいんだよ、ちょっと飲んでみなさいよ」
そう言って半ば強引に卓にも赤ワインが注がれた。
「ありがとうございます、頂きます」


頂きたくないのが本音だったが、明日の事を考えて、これをやつけて先に失礼するために最後の踏ん張りを見せる。

籠り物語

「雪村君の誕生日を祝って。乾杯」
「カンパーイ」
それから神戸屋での卓の誕生日兼年越しパーティは始まった。

 

物珍しいドンペリにワクワクしていた卓だったが、飲んで見ると美味しい物でも無かった。
自分の舌が子供なのだろうが、テレビで見るホストクラブの光景を思い出し、こんなものに大金を払う気がしれないと思った。

 

ドンペリを飲み干すと、すかさずオーナーからのビールのお酌が始まった。
「今日はきみは主役なんやからいっぱい飲みなさい」
「ありがとうございます」

卓は祝ってもらってる身分、頑張って飲まないと。
そう思い必死で飲んだ。


弱いわけでは無いようだが、決して強いわけでもなさそうだった。
だが、そんな事はお構い無しの雰囲気だ。

 

オーナーは神戸屋の誰もが認める酒豪なのだ。
夜も厨房にサワーを作りに降りてくるのだが、そこでも酒豪っぷりを見せていた。
厨房でサワーを作り部屋へ持って上がるのかと思いきや、作ったそばから一気に飲み干し、二杯目を作ってそこから部屋へと上がるのが毎日の日課だった。

 

酒の強さと酒好きは娘のチカさんにもしっかりと受け継がれていた。
しかし、お腹の大きなチカさんは禁酒中だった事が卓にとってはせめてもの救いだった。

籠り物語

テーブルにはオードブルやおつまみ、ピッチャーに入ったビールが二つ。
その他にも豪華に用意されていた。


年越しのパーティに誕生日の祝いを盛り込んでくれたのだった。

突然、

「まだビール注いだあかんで!」
そう言ってオーナーが何かを思い出したように部屋を出て行った。

 

直ぐに戻ってきたオーナーの手にはワインの様なボトルが握られていた。
「これな、きみの誕生日って聞いたから我慢して置いといたんや」
そう言ってラベルを見せてくれた。

 

卓はテレビで見たことのある名前に反応した。
「これがドンペリってやつですね」
すかさずオーナーは
「テレビでホストがよう騒いでるあれや」
にやりとしながら教えてくれた。
「せやけどな、あれはホストの値段やから、実際はそない高いもんやないんやで」
そう言って豪快に開け放った。

 

卓はオーナーの勢いに圧倒されながらも、自分の誕生日を理由に我慢しておいたという特別感が嬉しかった。

 

全員のグラスにドンペリが注がれていく、卓はお祝いとドンペリという未知の液体にワクワクしていた。

 

だが、ここで思い出して欲しい、卓は誕生日を迎えたとは言えまだ19歳、未成年だという事。

籠り物語

風呂道具を部屋へと置いてすぐにパブリックスペースへと向かった。


電気はついておらずまだ誰も居ない様だった。

パーティの準備でもしているのかと厨房へと様子を見に行く事にした。
しかし、厨房にも誰も居ない。
宴会している宿泊客の声が館内に響いている。

 

卓はひとまずパブリックスペースで待つ事にした。


暗いパブリックスペースを開けると
「おめでとう!」
卓は驚いて心臓が張り裂けそうになった。

ろうそくの火が灯ったホールケーキと共に
「誕生日おめでとう」
そう言いながら部屋の影からチカさんが現れた。

 

神戸屋のみんなが拍手で
「おめでとう」
と声をかける。

卓は照れながら
「ありがとうございます」
そう言って微笑した。

「ほらっローソク消して」
ちかさんに促され卓はローソクを一息に吹き消した。

 

部屋の明かりが付けられ
「おめでとう」
盛大に皆の声が響き渡る。

そこにはチカさん夫妻の息子のゆうき、持病のため普段はほとんどオーナーの部屋に籠りっきりのオーナーの奥さんまで来てくれていた。

 

誕生日と大晦日、特別なはずの1日が何事も無く終わっていく。
そう思い込んでいた卓にとって、これ以上無いサプライズとなった。

籠り物語

夜の仕事も終わり宿泊客は年越しムードで盛り上がっている。
そんな光景を横目に風呂へと向かう。

 

途中康之さんが居た。
「後で皆で年越しそば食べるで」
「あっはい。わかりました」
卓は年越しらしい雰囲気を味わえるのだと少し嬉しい気持ちになった。

 

宿泊客は皆酒盛りで風呂場には誰も居ない。
さっとシャワーを浴び、大きな湯船を独り占めにしながらくつろぐ。
「今日誕生日やけどもう1日終わるなぁ。」
独り言を漏らす。

その時、今朝彼女からメールが来て居た事を思い出した。
寝る前にでもチェックしようと今は忘れる事にした。

 

誕生日だからと言っても、ペンションで住み込みの仕事をしている卓にとっては何ら特別に感じなかった。
この後、年越しそばを食べる以外を除いては。

 

何も無く年を越し、明日も朝早くから通常通り仕事をするだけなのだ。
そんな事を考えながら1日の疲れを癒した。

 

風呂から出て、部屋に戻ろうと本館の二階へやって来た卓はオーナーと会った。
「おつかれさまです」
卓はオーナーに挨拶をする。
「おつかれさん、きみ今日誕生日やろ?今からお祝いするからパブリックスペース来なさい」
微笑みながら卓に言った。
「えっ?はい、わかりました。すぐ行きます」


思いもかけない出来事に卓は驚いたが、嬉しくないはずは無かった。

籠り物語

年も暮れに近づき年末年始の休暇に入りゲレンデは大にぎわいとなった。


普段並ぶ事の無いゴンドラにも長蛇の列ができており、いつものように何本もゴンドラを流す事ができない程だった。

 

それでも、雪は降り続き極上のパウダーとなったゲレンデを卓が放っておくはずもない。
一人乗りの人が並ぶレーンは比較的早く進むため、相乗りでゴンドラへと乗車し、時間の許す限り滑り尽くした。

 

日々のフリーランを延々と繰り返した卓の身体はある程度仕上がってきていた。
籠りにとってシーズンインのこの時期のフリーランを滑り込む事はとても重要な事だ。

 

卓はパークも好きだが山を滑り尽くす事こそスノーボードだと考えており、この時期にしかできない事を黙々と、だがしっかりと楽しんでいた。

 

ペンションの生活に入り、日にちや曜日の感覚は完全に無くなっていた卓は今日が今年最後だという事も忘れてスノーボードに熱中していた。


大晦日は卓にとって1年で特別な日だった。
勿論、世の中の皆が特別な日なのだが、それとは違う特別な日だった。

籠り物語

オーナーが持ってきたワイン確かに美味しかった。


意外と楽にグラスのワインを飲み干した時、卓に異変が起きた。

卓のすぐ側でゆうきが遊んでいたのたが、ふとゆうきの方を見ると、ゆうきがぐるぐると回って見えたのだ。
「やば、何これ」

それから辺りを見てみると全てがぐるぐると廻っている、遊園地のコーヒーカップなど比になら無い程に廻っている。


いよいよまずいと感じた卓は
「明日の仕事に影響するので先に寝させてもらいます」
すると康之さんが
「そば食べんでえぇんか?」
すっかり忘れていたのだが、それどころではない卓は
「ちょっと酔いが廻って食べれそうにないので」
そう断りを入れ
「お祝いありがとうございました、お先におやすみなさい」
なんとかそれだけを告げ、二階へと上がった。

 

屋根裏へのはしごを昇れるのだろうか、そんな事を考えた記憶はあるのだが、そこからは覚えていなかった。

 

大量にビールを飲んだため、普段は絶対に行かないのだが夜中にトイレが我慢できなくなり目が覚めた。
トイレから戻った卓は、まだふわふわと浮いたような感覚のまま再び溶けるように眠りへと落ちた。

籠り物語

気分が乗らず珍しく直ぐにペンションへと帰った卓は、気分を紛らわそうとパブリックスペースで漫画を読む事にした。


普段は小説等の活字しか読まない卓だが、小説は持ってきておらず、神戸屋には漫画しか置いていなかったのだ。

仕方なく棚にずらりと並んだ漫画から、なんとなく背表紙で選び読み始める。
読んでいる様で話は全く入ってこない。

 

すると、カップルがパブリックスペースへとやって来た。宿泊客だ。


「こんにちは、ここって使ってもいいんですよね?」
カップルはベッタリとくっつきながら卓に聞いた。
「大丈夫ですよ、自由に使って下さい」
そういって卓は部屋を出た。
「ここもかよ。昼寝でもしよ」
ぶつぶつ言いながら屋根裏へと戻った。

 

お客さんにカップルが居る事ぐらいは想定内だったが、ここまで気分を掻き乱されるとは思ってもいなかった卓は、仕事が終わり風呂もさっさと入り、屋根裏からこの日は出る事は無かった。

 

少しの負の要素が卓の脳内へと顔を出すと、繊細で敏感すぎる卓の気分は平静を保てなくなってしまうのだ。

まだ高校生のナイーブな部分なのか、ガラスのハートなのか、性格の問題なのか。


肝心のスノーボードでも気分が晴れないのだから卓にはどうする事もできず、ただただ聖夜の苦しみが過ぎ去るのを静かに待っていたのだった。