籠り物語
かといってオーナー一人だけでも充分過ぎる強敵だった。
テーブルのピッチャー二つは瞬く間に空になる。
オーナーは水を飲むよりも早いペースでビールを流し込む。
オーナーがグラスにビールを注ぐペースで卓のグラスも満たされる、卓はあっという間に酔いが廻っていた。
空になったピッチャーは新たに満タンになって帰ってくる。
卓は地獄を見ている気分だった。
このままではおかしくなってしまう、そう思った卓は一言オーナーへ断りを入れペースダウンする事にした。
その間にもピッチャーはみるみる内に空になった。
この人の肝臓と胃袋はいったいどうなっているんだろう。
そんな事を考えながら酔いでふわふわとしていた。
ふとオーナーが席を外した。
しばらくすると、またワインボトルを持って帰ってきた。
「うそやろ」
卓は思わず声に出した。
「これうまいんだよ、ちょっと飲んでみなさいよ」
そう言って半ば強引に卓にも赤ワインが注がれた。
「ありがとうございます、頂きます」
頂きたくないのが本音だったが、明日の事を考えて、これをやつけて先に失礼するために最後の踏ん張りを見せる。