篭り物語 シーズンⅡ
ハイシーズンの白馬、卓が戻ったタイミングは絶好のパウダーチャンスだった。
狙いは山頂からのパウダー一択で、他には目もくれずそのコースへと向かった。
昼頃のためコースは既にトラックが何本も入り喰われ放題となっていた。
だが、卓はそんな事は気にも止めず気持ちを高ぶらせていた。
与えられた環境で人がしない滑りを全力でできてこそ滑る甲斐があると言う持論があっての事だった。
チマチマ人の残飯を処理する様な小さな滑りはしないと言わんばかりに、あれたバーンを敢えてロングターンで豪快に残りのパウダーを食い尽くす。
マニアックな人間が見れば、これ程ネジの飛んだ滑りをするライダーは数多くはないだろう。
荒れたバーンをものともせず白銀のスプレーを上げ雪煙の中へと姿を眩ませる。
学生生活のブランクを感じさせない切れのある滑りは、今の卓の晴れやかな気持ちを表しているかのようだった。