誉の日記的物語

日記がてら書きたい事を好き勝手に書いています。 小説を書いており面白い小説がかけるようになりたいと、構成などはちゃめちゃですが書いてます。 読んで頂けると嬉しいです。どんな事でも意見貰えると助かります。

籠り物語

「まぁせやな」
卓も微笑した。

 

このやりとりのおかげで空気は少し和らいだ。
「中途半端な気持ちで関係を続けるのはなんか違う気がすんねん。白馬に行ってせっかくスノーボードにも集中できる環境やし。この中途半端にミホを繋ぎ止める時間も勿体ない時間になるやろし」


卓は自分の都合の良い事ばかり言っている事は自覚しているのだが、本心でミホの輝かしい今の時間を無駄に過ごさせている事に責任を感じていた。
無論、高校生の恋愛でそこまで重たく考えるのは珍しい事のようにも思えるのだが…

 

「うちも卓にはせっかくのスノーボードやし思いっきり楽しんでほしいと思う。卓はきっと言い訳してるみたいで嫌な気分で今喋ってくれたんやろうけど、そこは大丈夫やで。卓のそういう優しさはちゃんと伝わってるから」
見事に見透かされていた。

 

「白馬に戻る前にちゃんとこうやって話しに来てくれたし。卓のそういう所は、やっぱうちは好きやねんなぁ」
「ありがとう、当然の事やと思うから。お互いモヤモヤするし」
「そやね。卓と別れなあかんのは悲しいし寂しいけど、卓の気持ちはちゃんと理解してわかってるつもり。お互いこれから色んな出逢いもあるやろし」


こういう強がりを見せて安心させようとしてくれるミホに、卓は感謝の気持ちと寂しい気持ちが入り交じった、とても複雑な心境になっていた。

 

「ひとまず白馬で怪我せずに目一杯楽しんで来て。卒業式は帰ってくるんやろ?」
「ありがとう。そん時はまた戻ってくるよ」
「じゃあそれまで卓の無事を祈って応援してるわ」
「泣かす気か?」
少しうるっとしそうなのを必死で堪え、笑いながらそう言った。


「ミホも色々頑張れよ」
「うん」
「ほな出発の準備あるから行くわな」
「気をつけてね」
「ありがとう」

 

卓は原付のエンジンをかけ、軽く手を挙げ走り出した。
ミラー越しに写るミホはうつむきながら手だけを降っていた。
卓がその場を離れるまで必死に涙を堪えていたのだ。