幸せの白い犬 完
次の日、誉とキミとキミの嫁のまさよでハッピーのお線香を買いに出掛けた。
買い物を済まし家へ帰ると、おとんしか居ないはずなのにハッピーの側にお線香が焚かれていた。
自分でプレゼントしておいてなんだが、あれだけハッピーに嫉妬し毛嫌いしていたおとんが、ハッピーにお線香を焚いていたのだ。
キミと誉はそれを見てまた泣いた。
誉はお線香が焚かれたハッピーの側へ行き
「ハッピー最後にこんな事してもらえて良かったなぁ」とハッピー涙の粒を落としながら語りかけた。
誉は最後におとんがようやくハッピーを受け入れたような気がして嬉しくて仕方なかったのだった。
その日の晩おかんと誉は2人で話しをしていた。
するとおかんが
「ハッピーほんまえらかったな」泣きながらハッピーを撫でる
「きっとハッピーがおとうさんの癌も腎臓の病気も一緒に持って行っておとうさん助けたんやで…」
「じゃないとおとうさんの病気の回復の凄さ説明つかんやん」
誉も同じことを思っていた。
癌があんなに綺麗に完治した事、治るはずのない腎臓病が回復していき、尚且つハッピーがその腎臓病で死んだ事。
偶然にしてはでき過ぎていると誉も思い、とても神秘的な何かを感じずには居られなかったのだ。
幸せと名付けられたハッピー。
おかんを幸せにする白い天使だとばかり思っていたハッピー。
でも実は、おとんを助けるために現れた使者だったのかもしれない。
もしそうだとしたら、自分が毛嫌いしていたハッピーに命を救われたという皮肉な結末だと誉は思った。
何はともあれ平戸家に幸せを運んだ事に違いはない。
「ハッピーほんまにありがとう、これからもずっと見守っててな」
その後ハッピーは火葬され兄弟と実家に分骨されみんなを今でも見守り続けている。 (完)