誉の日記的物語

日記がてら書きたい事を好き勝手に書いています。 小説を書いており面白い小説がかけるようになりたいと、構成などはちゃめちゃですが書いてます。 読んで頂けると嬉しいです。どんな事でも意見貰えると助かります。

物語・小説置き場

籠り物語

神戸屋へと到着した卓は乾燥室へ板をしまい、ウェアの裾を捲って部屋へと上がった。 タカシはまだ戻っていなかった。 ウェアを脱ぎ仕事着に着替え一服し、仕事まで少し昼寝する事にした。 滑った後で疲れた身体に暖かい布団の組み合わせは、卓を眠りへと導く…

籠り物語

駐車場からペンションへと向かう下りの道に差し掛かった。卓はそこで板を履いた。 除雪された道路はコンクリートを感じる程の雪面ではあったが、かろうじてソールに傷はつかない程度の雪はついていた。 歩いて帰るにはまぁまぁの距離だが、滑って帰ればどう…

籠り物語

リフト終点タカシは危なっかしい滑りだが転ぶ事なくクリアした。卓は先にビンディングをはめ、既にスタンバイできていた。 タカシのボーゲンの滑りに合わせ卓は並走する。転ぶ事は無いが、スキーをした事の無い卓から見てもドキドキする滑りだった。卓は退屈…

籠り物語

リフト乗り場の近くに立っていた卓の元に、ボーゲンで危なっかしい滑りのスキーヤーが近づいて来た。 「お前もしかして素人なん?」卓は籠りに来てるぐらいだから、そこそこ滑れるもんだとばかり思い込んでいた。「何回かやった事あるけど、そんなレベル」タ…

籠り物語

気がつくと少し眠っていた。 15分程眠った卓の身体は少し回復はしていたが、少し冷えてしまっていた。暖房の前へ移動し、床に座り込んで軽くストレッチをしながら暖めた。 身体も目もスッキリした所でもう一本ゴンドラで山頂へ向かう事にした。ひとまず一番…

籠り物語

スキーヤーが好んで滑るこのコースは、普段はコブになっており、パウダーでも無い限りスノーボーダーはあまり寄り付かない。 卓はスノーボーダーでは珍しくコブを滑る事がとても好きだった。 いつかモーグルコースでスキーヤーと競いたい(到底敵うはずはない…

籠り物語

雪まみれの姿でそのままゴンドラの中間駅へと滑り降りた。 板を外し雪を軽く払い落とすと、レストハウスの側で板を反対に向けて雪面へと置き、その上に腰掛け煙草に火をつけた。 肺いっぱいに吸い込んだ煙を真っ青な空へと豪快に吐き出すと、座っている板か…

籠り物語

ゴンドラの中間駅までに準備を終えた卓はカフェオレで一息ついた。中間駅でも人は乗ってこず、山頂まで一人でのんびりと向かう。 昨日降り続いた雪はぱったりと止み、この上なく快晴だ。「ドピーカンやな」卓は独りで呟く。それほどまでの快晴だった。 ゴン…

籠り物語

康之さんの車へと乗り込み、ゲレンデへと向かう。 「お前ほんまにボード好きなんやな、昔おったバイトにもお前みたいなやつおったわ」「そうなんですね、好きな人は好きなんですね。僕は今はスノーボードに命かけてます」卓はおにぎりを頬張りながら答える。…

籠り物語

一息ついた皆を他所に、卓はすぐに部屋へと向かおうとした。 「卓飯は?」康之さんが咄嗟に声をかける。「おにぎり自分で作って持って行きます。お昼なんて食べてる時間ないです」「おっけ、ほな準備してこい」康之さんは笑顔で卓を見送った。 卓は部屋へ入…

籠り物語

別館へ移動しタカシが居る部屋を探していると、チカさんも康之さんも拭き掃除をしてくれていた。 卓が戻った頃にはほとんど終わりかけていたが、今日の内に流れだけは把握しておきたい卓は、あえて掃除では絡みが無かった康之さんに声をかけた。 「おつかれ…

籠り物語

卓も軽くアドバイスしながら、二人で協力して最後のベッドメイクを終えた。 チカさんは厨房で部屋毎の灰皿を洗っていた。 「ベッドメイク終わりました」卓が声をかける。「おっ、ほんなら後は部屋の拭き掃除と全館掃除機で終わりやな。タカシがやり方わかる…

籠り物語

その部屋のベッドメイクはまだ一つも終わっておらず、二人でちゃちゃっと終わらせるつもりだった。 「ほなさくっとやってまおか、タカシそっち言って」卓が率先して指示を出す。卓は仕事をしている時は、バイトの時でも、相手が社員だろうが先輩だろうがお構…

籠り物語

シーツをベッドへと織り込んで一枚目のシーツが終わり、二枚目のシーツと毛布をセットする。 二枚目のシーツと毛布は足元側だけを同じ要領で折り込み、最後に掛け布団をかける。頭側の余ったシーツを掛け布団にかけベッドメイクは完了だ。 枕にカバーをつけ…

籠り物語

広げられたシーツは、上下左右とも均等にベッドに合わせる。 「こっから一緒にやりながら教えるから卓反対回って」卓はチカさんとベッド越しに向かい合う様に立て膝で位置についた。 「ほんまやったら二人でやった方が早いねんけど、うちは部屋数多いから一…

籠り物語

それからチカさんのベッドメイクのレクチャーが始まった。 「まず、ベッドに薄いマットレス敷いてるから、これを綺麗に整える。言わんでもわかるわな」卓に向かって微笑しながら説明を続ける。 「ほんなら、まず一枚目のシーツをベッドに広げて、この時裏表…

籠り物語

補充が終わりタカシを手伝うためにそれぞれの部屋を覗いていく。すると、タカシを見つけるよりも先にベッドメイクしているチカさんを見つけた。 「ベッドメイク教えて下さい、っていうかお腹大丈夫ですか?」お腹の大きいチカさんを気遣って声をかけた。「あ…

籠り物語

掃除の時だけチカさんか康之さんが鍵を開ける事になっている。 ペンションの空かずの扉とあって、卓は少年のように胸を踊らせながら、だが表情には出すことなくチカさんが鍵を開けるのを見守った。 南京錠が外れゆっくりと開けられた扉、卓の気持ちをもてあ…

籠り物語

チェックアウト済みの部屋のユニット掃除が一通り終わり、最初の部屋から拭きあげをしながら回っていると、またタカシと遭遇した。 それはさっき出逢った部屋の隣だった。「嘘やろ」微かに声を漏らしたがタカシには聞こえてはいなかった。 卓は何か声をかけ…

籠り物語

「ユニットバスは中全部洗剤で洗って、換気扇つけたまんまひとまず全部屋一気に洗ってしまって」すると卓が「やってる間に乾いていくって事ですね」「説明が楽でいいわ」チカさんはニコッと笑みを浮かべる。 「洗い終わったら、使い終わったピローカバー纏め…

籠り物語

「部屋掃除はやる事多いねん、別館は洋室でユニットバスもあるし」すると卓は「じゃあトイレついでに水回りも僕やります」その言葉を聞いてチカさんは「あんたここで働いた事あるんちゃう?」と笑いながら言った。 「なんでですか?」「水回りはまとめて1人…

籠り物語

チカさんは謎の驚きの声をあげたと思ったら、扉を閉めて「やっちゃ~ん!」と叫びながら厨房へと走って行ってしまった。 卓は何が起こったのかわからず、何かまずい事をしたのかと、チカさんが戻る迄掃除の手を止めて待つ事にした。掃除初日から何を言われる…

籠り物語

二人がまず入ったのは男子トイレだ。男子トイレには男性特有の便器があるため、説明を一ヶ所で済ませるためだ。ここのトイレには特有の便器が二つ、大便器が三つあった。 「じゃあまず、基本的なルールとして内では節水を徹底してるから水はジャブジャブ使い…

籠り物語

休憩を挟み、この日から午前中の部屋掃除と館内の掃除が始まった。タカシは既に経験済みのため、指示を受け先に掃除へと向かって行った。 スタッフの屋根裏がある棟は神戸屋の本館にあたり、本館の各部屋は和室になっている。本館には宿泊客はいないため本館…

籠り物語

「ご馳走さまでした」食堂の方から声が聞こえる。ちらほらと朝食を食べ終えた宿泊客が部屋へと戻り始めていた。 卓とタカシは食堂へと出ていき、客が居なくなったテーブルの物を手早く下げる。タカシはそのまま食堂の片付けへと残り、卓は洗い場へと戻った。…

籠り物語

朝食の時間数分前から焼き魚、ご飯、暖かいお茶を順番にテーブルへと出していく。 康之さんから焼きたての脂の乗った鱒の入ったトレーを受け取り、卓は食堂の魚皿へと盛り付けていく。魚の皮が座った時に奥になるように盛り付ける。身が割れてしまっているも…

籠り物語

タカシは味噌汁用のおわんを人数分準備していた。銀のトレーにおわんを並べ、更にトレーを重ねておわん乗せる、それはまるでタワーの様になっていた。 大量のおわんを場所を取らずに準備できる最高の方法だと卓は思った。 ご飯を混ぜ終わると、康之さんから…

籠り物語

屋根裏部屋は恐ろしく寒い朝を迎える。布団は冷たく、軽く湿っている。 卓は携帯のアラームで目を覚ます。目を瞑ったまま手探りで煙草を探す。起きてすぐに吸いたいわけではないのだが、そうしなければ吸う時間がなかったからだ。 喉を通る煙、肺へと溜まる…

籠り物語

部屋へ戻る途中ふとパブリックスペースを覗くと、そこには漫画を読むタカシの姿があった。 卓は疲れていたためパブリックスペースへは立ち寄らず、自動販売機で一番搾りを買って部屋へ上がった。もう一度言うが卓は18歳で未成年だ。 部屋へ戻り一番搾りを一…

籠り物語

風呂場はすでに宿泊客はなく、広々とした風呂場を卓は一人で満喫する事ができた。シャワーで汗を流し湯船へと向かう。 少し手をつけ温度を確かめる。寝起きで体温が下がっている卓にはとても熱く感じた。 洗面器でつま先から順に少しずつお湯をかける。熱さ…